特集つながる、つがる。

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つながる、つがる。

つながる、つがる。

束の間だが津軽を歩いて強く感じたのが、「つながり」だ。継承、と言ってもいい。親と子、夫と妻、隣人と隣人、過去と現在、自然と生活、彼岸と此岸・・・。つがるは、つながっている。ぼくたち旅人とさえも。

「馬市まつり」と「新田火まつり」 「つながる、つがる」を強く深く感じさせるのが、この祭りだ。
8月30日の日曜日。商工会館前には露天が立ち並び、イカを焼く香ばしい匂いが漂っている。つがる市は木造町、森田村、柏村、稲垣村、車力村の1町4村が合併して生まれた町だが、出身地区の名前を染め抜いた半纏やさまざまなコスチュームで変装した若者たちが三々五々集まってくる。
木造で東北三大馬市の一つが開かれていた、そのよすがを偲ぶ「馬ねぶたのパレード」。午後1時にスタートして、中心街の有楽町通りにさしかかる。
太宰治の『津軽』に「"木造は、また、コモヒの町である"」とある。歩道部分を覆って風雪をしのぐ雪国独特の商店街の構造のことだ。三重四重にコモヒを埋めつくす見物人の前を、パレードの列がのんびりと通り過ぎてゆく・・・。

日が傾くと、第2部というか、「新田火まつり」の始まりだ。パレードを終えた14、5頭の馬ねぶたがすでに空地に並べられている。向かいのステージでは、弥三郎節、津軽じょんがら節、津軽よされ節など哀調を帯びた調べと踊りがひとしきりつづく。ただのアトラクションとは言うまい。津軽を代表する民謡をここ津軽で五感で体感していると思えば、とても贅沢なひとときに感じられる。

日もとっぷりと暮れたころ、松明によってステージに結界がつくられ、一連の儀式を経て、モッコ(※)たちがいよいよ馬ねぶたに火を放つ。火はあっという間に高々と燃え上がった。激しく轟く炎の中から一瞬馬の悲鳴を聞く思いがしたのは、旅人の感傷のせいだろう。

その昔、津軽の新田開発は馬なしでは果たせなかった。馬は貴重な労働力であるとともに家族の一員でもあった。そんな馬たちを心を込めて野辺送りする、これは津軽人の馬への深い愛情と感謝を表す儀式なのだ。
土地の伝統とつながり、冥界とつながり、素朴だが素朴ゆえに胸に迫る祭りだ。夜空を焦がす炎、降り注ぐ火の粉、子供の目にはそら恐ろしげに見えたかも知れない今夜の光景は、自分の故郷を映す原風景として幼い心に刻み込まれたに違いない。
馬ねぶたが燃えつきると、夏が終わる。祭りの終わりは、いつも少しもの哀しい。
※モッコ・・・津軽新田の守護神を現す白装束。
手踊り・よさこい・思い思いの仮装と、団体ごとに趣向を凝らせて練り歩く。 終わり行くつがるの夏。

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