特集つながる、つがる。

P-05.

毎年おなじことが、むずかしい。

毎年おなじことが、むずかしい。

ハウスの中では「桃太郎」という品種のトマトが真っ赤に色づいていた。
「撮影するっていうから残しといたんだ。ほんとは青いうちに出荷するんだが」と語るのは、稲垣地区で4代目の黒滝晃仁さん(49歳)。
お父さんの時代に転作でトマトを始めたが「最初の年は全滅さね。その後も雨が降るたんびに冠水と排水の繰り返し。まわりに同世代の仲間がたくさんいて、随分助けてもらった」という。農協のトマト部会では機械の共同使用はもちろん、共同で選別したり、2個入りや4個入りなど箱詰めの工夫を相談したり、と横のつながりも活発だ。ちなみにトマトの選果は丸みのA品、大きさのB品など4ランクに分けられ、D品と比べると約3倍の値がつくらしい。
青森県産のトマトは東京の中央卸売市場への出荷が多く、特に7~9月はシェア第1位を誇る。黒滝さんのところでも、お盆あたりがピークになる。昼夜の寒暖差が大きい青森で育ったトマトは、色が鮮明で味がいいという評判だ。

ところで、黒滝さんは少し回り道をしている。
「長男だで、いずれは親父の跡を継ぐ気だったけんど、若いころはサラリーマンがえらく自由に見えてよ。しばらく車の整備会社に勤めていたっけ。だから今でも機械の修理ならお手のもんよ(笑)」
そして、今は?「やっぱり百姓が一番ええ!自由だし、自己責任で好きなことができる。農業なんて、種蒔いて、植えて、収穫して、昔は簡単だと思っていた。その毎年同じことがむずかしい。むずかしいから、また面白いんだな」
介護士をしている奥さんは、毎週末には手伝いにくる。夫婦の最近の会話は、もっぱら子供の成長のことと旅の話題らしい。
一番うれしいときは?「収穫のときだな。今年はなんぼ儲かるか、わくわくする(笑)」 トマト生産者・黒滝さん。 赤く色づいた「桃太郎」

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