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丸くて柔らかくて、メロンは人柄。
青森といえばリンゴが合言葉だが、近年はメロンも全国6位のシェアを誇る代表的産品だ。なかでもつがる市は県の作付面積の7割以上を占めている。そのつがる市のメロンづくりを代表する工藤十三雄さん(60歳)に話を聞いた。
のっけから通販番組のビデオを見せられる。タレントたちが口々に「甘~い、おいしい~」と言いながら試食しているのは、工藤さんが手塩にかけて育てたメロンだ。「あん時は売れたな。値段もえがった」と嬉しそうに語る工藤さん。初対面のぎこちなさをさらりと洗い流すような、柔らかでいい笑顔だ。
番組で紹介されたメロンは、赤肉の「レノン」という品種。
「糖度は15度以上、18度というのもある。おなじ赤肉の夕張メロンの糖度よりンと高い。甘さと味には自信があるが、あっちはブランド力があっからなぁ。それがウチらの課題だなぁ」
畑での撮影をお願いすると、あいにく収穫が終わった後ということで、急遽仲間の畑にお邪魔し、揃ってパチリ。おまけに収穫したばかりのメロンをごちそうになった。・・・ウーン、じつに甘い!
メロン栽培で大事なことは、何よりも土づくりだという。幸い一帯は屏風山の砂丘地帯にあり、「砂まじりで水はけがええ。あとは堆肥や草むしりなどとにかく手間ひまを惜しまねことだな」と、達人は言う。
この春に病を得た工藤さんにとって、後継者が気になるところだが。あるとき東京で暮らしている息子さんに農業でメシは食えるかと聞かれて、考えてしまったという。
メシは食えるが、これから家は建つか? と考えたら、「やれ」とは言えなかった。経営環境は厳しいし、農業は天候との戦いでもある。
「だどもまあ、ウチの奥さんと二人で喧嘩でもしながら楽しくやっていくさ。この仕事が好きだからさ」と、工藤さんは最後までほがらかだった。 メロン生産者・工藤さん。 手塩にかけた畑の前で。 大きさなどの規格により選別し出荷。